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@nalgami

Twitterに書ききれないことを置く場所

バブみが分かる税理士さんと同人作家に特化した確定申告サービス「ドージン・ドット・タックス」を作った話

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今年の確定申告、既に終わらせた方はお疲れ様でした。これからの方はあと5日!がんばってください。

さて本日、ドージン・ドット・タックスというサービスを秋葉原(と浅草橋の間)にあるSwitch税理士事務所がリリースしました。ドージン・ドット・タックスとは、同人作家・フリーランスクリエイターに特化した確定申告サービスで、クリエイターからみなさんの税に関する事務作業を極限まで減らし、創作活動だけに集中してもらうことを目的に作られました。

私が税務をお願いしているSwitch税理士事務所の水村耕史先生に同人作家さんたちの現状を伝え、これはいかんと話しているうちにこのサービスができました。 サービスの概要については特設サイトをご覧いただくとして、このサービスができた経緯と特徴をこちらに書きたいと思います。

事の発端

私は1月末で会社を辞めてフリーランスとなり、住民税や年金、保険料を自ら納付しに行く必要が出てきました。資料を調べているうちに、そういえば今年の所得って何があるんだろうと考えてみると...

  • 給与所得: 勤めていた会社から支払われた給与
  • 事業所得1: フリーランスとしてクライアントから支払われる報酬
  • 事業所得2: 同人活動(アキバのアナバなど同人誌の売上)から入ってくるお金

と3つあることが分かり、これをひとりで確定申告するのはダルいなぁと税理士さんを探していたところ水村先生と出会いました。秋葉原の自宅から徒歩で通えるという理由でSwitch税理士事務所を選んだのですが、よくよく話してみると水村先生は27歳と税理士の中ではかなり若く、デザイン会社も経営しているとのこと。(この本の表紙イラストなど、書籍や音楽CDのグラフィックが中心だそうです。)
25の自分と年齢が近く、さらに同人やイラスト界隈にも詳しいことから話が盛り上り、初回面談では税務とは関係ないバブみの話などをしていました。
バブみは冷めた現代社会に疲れた若者が癒しを求めてうんぬん。

f:id:nalgami:20160309174910j:plain バブみが分かる税理士 水村耕史先生(27)

自分の周りには、ライトノベルのイラストを担当する絵描きさん、オリジナルエロCG集で生計を立てるグラフィッカーさん、商業雑誌で連載するエロ漫画家さんなど、個人事業主として創作業をされている方が多くいらっしゃいます。
その中のごく一部の方々ではありますが、彼らと話していると元会社員の自分にとっては驚愕の発言を耳にすることがあります。

  • 「年金や健康保険料を払っているのか覚えていない。料金が怖くて病院に行けない。」
  • 「引越ししようと思ったら収入証明ができなくて審査に落ちた。」(前年の確定申告をしていない)
  • 「確定申告って源泉徴収された原稿料を取り戻す手続きだよね。二度手間なんだけどあれって何の意味があるの?」
  • 「40過ぎのおばちゃん税理士に頼んでいるが、自分の作品(エロCG集)を見せたら『違法なことやってない?』とめちゃくちゃ怪しまれた。」
  • 「最後に健康診断をやったのが10年前の高校生の時。」

注意: もちろん税や健康に対してしっかりと管理をされているクリエイターさんも多くいらっしゃいますので誤解なきようお願いします。
このような話を耳にする度に、社会的に(実際には雇用者である会社から)保護され、面倒なことが本人に見えないように隠蔽されている会社員と、やるもやらないも自らのリスクで全ての手続きをしなければならない自営業者の差を実感します。

水村先生にこの話をしたところ、水村先生のところにもデザイン会社を通して知り合ったクリエイターさんから税や社会保険に関して、さらに最近ではマイナンバーについて漠然とした不安が寄せられているそうです。
「せっかく秋葉原に事務所を構えているし、クリエイターを手助けするサービスを作りましょうよ!」と提案し、この企画が動き出しました。

サービスの特徴

このサービスは「クリエイターが創作業だけに集中できる環境」=「税に関しては会社員のように本人は何もしなくて良い状態」作りを目標としています。
基本的なサービス内容は私と水村先生で決めていきました。そして実際に私の知り合いの同人作家15名の方々に2ヶ月ほど先行利用してもらい、トライアンドエラーで修正していきました。その結果、一般的な確定申告サービスとは大きく異なる、いくつかの特徴が見えてきたので紹介します。

いろいろ「分かっている」

同人方面に明るくない税理士さんにお願いする際、まずは「同人誌とは」から説明しなければなりません。加えて成人向けの作品を製作されている方は、いろいろと面倒事や抵抗感もあるかと思います。
水村先生の場合は同人誌だろうが成人向け作品だろうが分かっているので前置きの説明は不要です。
さらに委託販売や即売会についても熟知しており、在庫管理・経費算出のための簡単計算シートなども準備しています。

専用封筒

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私は自分が所属する同人ソフトサークルの案件や、ソーシャルゲームの会社からアートディレクションを依頼などで、イラストレーターさんや作曲家さんと直接やり取りすることが多々あります。
発注から納品までトラブルなくスムーズに進み、いざ原稿料の振込となったときに財務担当から「◯◯さんから請求書が届いていません。」と連絡があり「えっ!?」となったことが一度や二度ではありません。
本人に電話してみると「印刷したり住所を書いたりするのが面倒で後手後手になっていた。」と話します。
それを聞いて以来、自分の担当する案件ではクリエイターさんに返送用封筒と請求書の雛形(あとは自署と印鑑を押すだけの状態)を事前に郵送することにしました。

今回契約者のみなさんには毎月末に領収書や売上報告書を郵送してもらうのですが、上の教訓から後手後手にしそうな方の出現が予想されたため、切手も住所の記載も必要ない「料金受取人払郵便」封筒を作成し、契約者のみなさんにお渡しすることにしました。
クリエイターさんが行う唯一の税務作業は月末にこの封筒に領収書や売上報告書を突っ込んで投函するだけです。

回数無制限相談

一般的な税理士事務所では、契約者が税理士に相談・面談できる回数に制限(2ヶ月に1回までなど)があることが多いです。
これでは聞くのが億劫になってしまうなあと思い、思い切って回数を無制限にしました。(元々Switch税理士事務所では回数制限を設けていなかったそうです。)
ネットで活動されている方も多いので、Skypeで気軽に質問できるようにしています。24時間365日水村先生が気づき次第随時返信してくれます。
こちらは事前にアポが必要になりますが、秋葉原の事務所での面談も回数無制限になっています。書類等を実際に見てもらいながら相談したい場合に有効だと思います。

国保組合への加入支援

法人に所属していない漫画家さんやイラストレーターさんは、国民健康保険から文芸美術国民健康保険組合(文美保険)に切り替えることによって、保険料が年間数十万円お得になる場合があります。
今回社会保険労務士(労働・社会保険に関するエキスパートで国家資格です)の方と連携し、文美保険を含めた社会保険の総合的なアドバイスや加入支援を行うオプションを提供しています。

料金プランと割引制度

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料金はその年の売上だけで完全決定される単純明瞭な体系になっています。
「急に10万円の出費はちょっと」という方向けに、月額払いと即売会2回払い(9月、2月)を用意しました。
ほかにも印刷所っぽい割引を考えて試験的に入れています。

  • 早割: 先着20名の方の料金を10%割引
  • 紹介割: 契約者からの紹介で5%割引
  • 同時申込割: 同時に友人と申し込むと10%割引

これらの割引は組み合わせることが可能で、合算して最大20%割引します。
料金プランの定価は税理士依頼料の相場では普通ぐらいだそうですが、割引を組み合わせることでかなり安く抑えることができると思います。

まとめ

本来こういったサービスは日本ネットクリエイター協会などの公共性・中立性の高い団体が全国の税理士事務所と連携して提供すべきだと考えています。
(日本ネットクリエイター協会も同人というよりはニコニコ動画などのネットで活躍しているクリエイターに重きを置いているようです。)
同人市場は750億円規模にまで拡大しており、そろそろ同人作家やアマチュアクリエイターを保護したり互助するための協会が登場してもおかしくないとは思うのですが。

2013年まで白色申告で300万円以下の事業者は記帳や領収書等の保管義務がありませんでしたが、法改正によって2014年1月からすべての事業者に対して記帳義務及び記録保存義務の保管が発生し、もはや白色申告を行うメリットがなくなってしまいました。
青色申告に切り替えることによって65万円控除(極端に言うと65万円経費を使ったことにできる)を受けることができ、税理士費用を一部または全額相殺できる場合があります。

水村先生はこのサービス専属のスタッフさんを雇ったりと受け入れ体制をしっかりと整えています。とはいえ個人事務所のため定員が少なく限られていますので、税金にお困りのクリエイターのみなさんはとりあえず問い合わせだけ早めにしてください。
ゆくゆくはこのサービスで集団人間ドックなど健康面のサポートも充実させていきたいと考えています。